4.4 MBAで習う戦略をうどん屋さんで説明する

1つ前の項目で、MBAで習う戦略と戦略論を少々説明した。何となく分かっていただけた人はそれでありがたいのだが、よく分からなかった人もいるかもしれない。あえて強調するが「戦略」を知ることは、MBAで習うコアの集大成、まさにMBAの根幹でもある。もしそれが分かればみなさんにも結構役立つはずだ。さらに戦略という考え方は、何も大企業の社長や役員だけが考えるものではなく、小さな自営業のお店からレストランまで幅広く適応できる考え方である。そして、最近私はこれが個人にも適応できることを日々実感しているところである。そこで、ここではMBAで習う戦略をできる限り分かりやすく説明することに挑んでみる。

ポーターのポジショニング論やバニーのリソースベースビュー(RBV)というような言葉を使うとどうしても訳が分からなくなるので、ここからは「戦略」という言葉以外、難しい専門用語や横文字は使わないように試みる。

説明にあたり、私の両親が経営している家族経営のうどん屋を例に挙げるが、正直何でもいい。自分よく通う小さいカフェ、美容院、文房具店などを想像してもらってもいい。さて、もしなければとりあえず、うどん屋の「店主」になった気分になってほしい。想像しやすいように「うんど屋」は、地方都市の商店街に近い市街地にあり、幸い近くには市役所があるため常連客が多い。席数は20程度、従業員は店主である「あなた」と、その妻の2人だけであるという想定にしておこう。

このうどん屋の戦略とは?

さて、このうどん屋の戦略とはまず何かを考える。ちなみに、前項で私が考える戦略とは、「競合他社に対して競争優位を確立しつつ、企業が持続的に収益を上げ続けるための需要サイドと供給サイド双方からなる方法論」である。と述べたが、これは完全に忘れて大丈夫である。

ふつうに言えば、「近くのコンビ二などに負けず、うどん屋を潰さず、ずっと営業を続けていくための方法」である。

さて、いきなりその方法をただ漠然と考えるのではなく、ある種のプロセスで考えるのが良い。

 

1)お店の置かれた状況、つまりお店の外の状況を見回す

そもそもお店は簡単には移動できないので、店主であるあなたはお店がある場所が変えられない前提で、「お店の外を見回してみる」ことから始める。何をすべきかは、お店が駅ナカにあるのか、郊外店にあるのか、銀座にあるのか、岐阜市にあるのかで全然違うからだ。具体的には「近くに競争相手になりそうなうどん屋はどれくらいあるのか?」また、うどん屋はランチの時間帯が一番忙しいが、お客さんは毎日うどんを食べない代わりに、コンビニ弁当や、洋食で済ませる可能性もある。なので、そうした「お昼を提供している飲食店がどれくらいあるのか?」もしかして、「最近オープンしそうな飲食店があったらそれにも注意したい」。そして、「最近のお客さんの懐事情」も気になるところだ。お客さんが毎回のランチで使える額がいくらくらいで、給料が上がってそうなのか、もしくは下がってそうなのか?どんなタイプのお客さんなのか:年齢、性別、タバコを吸う人は多いのか?などなどついても観察が必要である。また関係業者にも目を向けてみる。最近お店で使う米、油、醤油、みそ、野菜などの仕入れ先が値上げしないか、他に仕入先はあるのかないのか。そんな感じでお店の周りの状況を見直してみる。またその状況を表や図に書いてみるとより整理しやすくなるだろう。もし、「そんなことは店主なんだから当然やっているよ!」と思うかもしれない。でも大半はこうした分析がしっかりできていない。分析が客観的で正確にできていなければ、その上に立てる戦略もふらついてしまう。

 

2)次の2つの立場からどちらか1つだけ選択するは間違い

次に、先ほどの分析結果を眺めていても、「あーなるほど、そうだなー」となるだけで、どんなに眺めて見ても、あなたのお店は何も変わらない。ここからは競争に勝つためのいくつかの決断が待っている、最初の決断は、次の二択から一つを選ぶものだ。1つ目が「値段をできるだけ安くして勝負すること」。2つ目が、「(値段以外の)何か特別なものや商品で勝負すること(値段は必然的に上がる)」。簡単に言えば、安さを目指すか、それ以外で勝負するかを選ぶということである。実は思った以上にシンプルである。

そして1つ目を選んだあなたがやることはただ1つ。材料の仕入れ、お店の電気代、全てにおいて費用削減に取り組み、とにかく商品をお客さんに安く提供しつつ利益を確保することである。これを続ければ、確かに潰れずにずっと営業を続けていけそうである。

2つ目の特別感(差別化という言葉は硬いので使わない)を出すというのは、少々幅が広い。例えば、近くのうどん屋さんでは提供されていないような独創的なメニューを提供する、味をこだわりその地域で一番おいしいうどんを目指す、提供するスピードをとにかく他より早くする、お店位の内装を何か特別にするなどして競争相手よりも(価格以外の形で)高い価値を提供するものである。うどん屋さんだからと言って必ずしも味で勝負することだけを指しているわけではない点に注意が必要である。

ここにきて、どちらか1つを選べと言われてもなんだか困惑するかもしれない。実は、この2つの分類のどちらを取るべきかという論調で語られることが多いが、実はそんなことは無いのである。例えば、明らかに1つ目の価格の安さで勝負している(ように見える)マクドナルドだって、全てが全て価格だけで勝負しているわけではない。むしろ、マクドナルドは低価格を目指し続ける代表企業だったのだが、その戦略の結果2001年頃から円高や価格下落による客単価低下が原因で業績は悪化した。その戦略だけではうまくいかないことを証明しているのだ。そして近年のマクドナルドといえば、「マック バイ バリスタ」と呼ばれ高品質なカフェをしたり、Free WiFiなどを提供して便利な居場所としての価値を(値段が安いことと同時に)お客さんに提供している。いわば、特別感を出す方法の1つの選択肢に、「低価格で勝負する」というものがあると考えておいて問題ないだろう。そして実際多くの企業が、低価格と特別感を出す戦略を同時に実施している。そのような中途半端な選択ではダメだという人がいるかもしれないが、その両方を実現できることを証明したのは、実は多くの日本企業である。トヨタは低価格と高品質を両立した。ユニクロも然りである。その両方が実現できている方が、片方だけに特化しているより優れているとも言える。ちなみに、それができている日本企業がなぜ世界に通用しないのか?それがイノベーションの壁なのだが、それはとりあえず今回は置いておこう。

ここで改めて整理すると、あなたが考えるべきことは、「低価格で勝負すること」も含めて、「どうやったら特別感を出せるのか?」ということに尽きる。つまり、お店の周りにコンビニができたり、新しいうどん屋ができたりしても、特別感を出せれば勝てる!ということである。するとあなたは、「どんなものが特別感と言えるのか?」となるはずだ。そこで次のステップに進もう。

その前に少々補足だが、飲食店にとって出店戦略(どこにお店を出すか)が最も重要だという人がいるかもしれない。確かに、その通りである。そもそも勝てそうな場所にお店を出すことは、「戦わずして勝つ」という最強の戦い方のように見える。言い換えれば「特別感を出すことに注力しなくても、勝てる状況(場所)にお店をおく」ということである。「戦わずして勝つ」は、「孫子の兵法」にも登場するもので、MBA流にいえば「ブルーオーシャン戦略」ということにもなるだろう。(横文字と、専門用語を使わない約束を破ってしまったことをお詫びしたい。)しかし、残念ながら出店戦略は、ブルーオーシャン戦略ではない。なぜならば、ある場所で一人勝ちのお店があったら、そのような場所は、他の誰かもいつかは(あるいはすぐに)気がついくからだ。例えば、大成功しているセブンイレブンの近くには、時間の問題でローソンが出店してくるだろう。ブルーオーシャン戦略(は何かは分からなくてもよい)の本質は、「低価格で勝負すること」と「特別感を出すこと」を同時に目指すべきとという立場なのである。少し想像してみてほしい。他の会社にはない特別感があって、しかもその特別感が低価格で提供されている。競合会社は、そんな会社に勝負をしかけるだろうか?少なくても、その特別感では勝負にならない、と考えて勝負を仕掛けない。これこそが、「戦わずして勝つ」を実現する戦略なのである。少し前に、なぜ私が「2つの立場から1つだけ選択することが間違いである」といったのは、そういうことである。そうではなく、「低価格で勝負する」ことも特別感を出すことの1つの選択肢であれば、(特別感は複数選べるものなので)少なくても2つを同時に実行するという選択肢も残ることになるのだ。(ただし、もちろんこの2つを同時に実行することは極めて難しいのだが)

 

3) トレードオフになる活動や事柄を探す

さて、もうあなたは特別感を出すことに集中することが戦略なのだと気がついてきたはずだ。では、どんな特別感を出せばいいのか?と考えるはずだ。まずは何が特別感なのかをしっかり把握する必要がある。ありがたいことに、「特別感といえるかどうかの判断基準」がある。それが「同時には成立しない二律背反の関係」にあるかどうかである。まさか横文字を避けた結果、余計に分かりにくくなったので、ちょっと横文字を使わせて頂くと、つまり特別感があるものとは「トレードオフ」の関係があるもの、ということだ。例えば、あなたがお店に特別感を出すために「お客さんにとにかく早く商品を出す」方法を選んだとする。商品を早く出すためには、品質なのか、見た目なのか、落ち着いて食べられる雰囲気なのか、少なくても何かそういったものを犠牲にしないと追求できない。なので、これは特別感と言ってよい。一方で、お店のレイアウトを変えて「和の雰囲気から、現代風な雰囲気のお店にする」という方法を選んだ場合、これによって味などの品質や提供スピードなど他の価値が下がることがない。つまり何も犠牲になっていないかもしれない。その場合、これは特別感としては不合格というわけだ。

ちなみにトレードオフかどうかは、案外難しい。そこで突然ですがテストしたいと思う。

1問目:「お昼休みに、うどんを食べるか、弁当を食べるか。」これはトレードオフですか?

2問目:「お昼休みに、お茶を飲みますか、それともコーヒーを飲みますか?」これはトレードオフですか?

正解は、1問目は、「ギャル曽根さん」のような人は別として、普通の人は、うどんを食べたら弁当は(お腹がいっぱいで)食べられない。つまりどちらかを選んだ結果、もう一方を得るという価値を犠牲にするため、トレードオフを伴うと言える。2問目は、(私のような普通の胃袋の人でも)どちらも飲もうと思えば飲めるので、これはトレードオフにならない。先ほどの話に戻ると、あなたのうどん屋さんで、今までお茶しか提供していなかった。そこで、新たにコーヒーを提供する方法で特別感を出そうとしたとする。確かにお客さんにとっては喜ばしいことなので新しい価値である。しかし何かしら他の価値が犠牲になっていないのであれば、これは特別感とまでは言えないのだ。何かやった結果、他を削らないとできない、そんなモノやことが特別感というわけだ。だから、特別感を何にするかは、従業員ではなく店主(会社でいえばトップ)にしかできない決断なのだ。大きなリスクが伴う。だからこそ、戦略は社長、CEO、リーダーが決めるべきものであり、失敗すれば会社の業績が大幅に落ちたり、最悪の場合には倒産しかねない。それほど重要な判断になりうる。ちなみにMBAは「どんなことを決断すべきなのか」は教えてくれるが、最終的に「何をするのか」を決めるのはあなた自身だし、リスクを背負うのもあなただ。

 

トレードオフが特にないもの

さて、もしあなたがトレードオフになる特別感を探す過程で、トレードオフにならない事柄や活動を見つけたら、それはそれでとても大事な発見なので書き留めて置く必要がある。例えば先ほどの続きで、お茶だけを提供していたが、コーヒーも提供して特別感を出したいと考えた。具体的にコーヒーを提供する方法を考えた結果、特に他の価値を下げる必要性はないと判明したとする。であれば逆に、何故その両方をすぐに提供しないのか?ということになるわけだ。他の例としては、お店である新商品を追加したいと考えたとする。それを実行しても他の商品を減らす必要もないし、特段トレードオフを発見できなければ、そもそもなぜそのメニューを提供しないのか?となる。トレードオフの状況とは、既にお茶もコーヒーも提供していた。そして次にアイスクリームも提供したいと思った。でも倉庫のスペースや機械を置く場所を考えると、アイスクリームを提供するためには、コーヒーの提供を止めなければならない、となった場合にアイスクリームの提供は特別感になるのだ。言葉の通りであるが、ただのアイデアのようなものは特別とは呼ばない。つまり、トレードオフにならずお客さんにより高い価値を提供できるなら、それはすぐに実行すべき(単なる)「アイデア」や「改善案」と言える。改善をくり返した結果、これ以上何かをすると他の何かが犠牲になるという状況までは行き着いて初めて特別感という壁に遭遇するのである。

改善といえば、トヨタを思い出すかもしれない。改善、改善、改善を繰り返すと、どんどんお客さんに提供できる価値が高まる。まだあなたのお店に改善の余地があるのなら、特別感を考えるのは少々先かもしれない。まずは目の前にできる改善を行うことが先決である。もしかすると、そう聞いて改善中は戦略なんて考えなくてもいいと思われるかもしれないが、それも間違いである。戦略はどの段階で考えてもよいのだ。むしろ、戦略はまだお店が営業を始める前から考えたって良い。戦略を考えていれば、今あなたがしている改善の延長線上に特別感があるかどうかを確かめられる。戦略は、特別感を作る最中にも役立つし、特別感が今すぐ必要な時にも役に立つのだ。将来の方向性を知る羅針盤になるのだ。

 

4) お店の中の状況を見回して、それがふさわしそうか考える

特別感というものが一体どんなものなのかは分かったと思う。そしてあなたは特別感を出す複数の方法を思いついたかもしれない。次は、その方法をより洗練させていく。あるいは実際にどうやって実行するのかを考えていく。先ほどは1)では、お店の外の状況をいろいろ観察したが、次にスポットを当てるのはお店の中のことである。お店の外を見回した際はどちらかと言えば「お客様目線」だったと思うが、ここからは「店主や一緒に働く妻の視点」でお店を見直してみる。ここでも特別感のネタになるようなもの、競争相手を意識して何かお店の決め手になりそうなものはないか注目すると良い。今どんなメニュを提供しているのか、何がよく売れているのか、商品の回転率はどうか、メニューの品揃えはどうか、営業時間やお店のレイアウト、清掃状況なども改めて気にしてみる。さらに店主であるあなた自身、一緒に仕事をするパートナーという「人」やその「能力」にも気を配る。何をつくるのが得意で、何が苦手なのか。何だったら楽に作れるのか?お互いの役割分担の仕方はどうか?さらに目に見えにくいものも対象にしてみる。例えば文化(今までこんな感じでやってきた)、雰囲気、また店主であるあなたがお店を開いた時の夢や目標みたいなものだって再度思い出してみる。

例えば、先ほどのトレードオフで、今まで提供していたコーヒーをやめて、アイスクリームを提供することで特別感を出そうとしたとする。それは、お店をやっている人の立場からして、今までのお店の文化、個人の能力などからして、ふさわしいかどうかを考えてみる。お店は今までずっと和のスタイルでやってきたのに洋風のアイス、店主もパートナーもアイスクリームを提供することは初めてでアイス提供の能力は高くない、さらにはお店の目指しているのは「早く食べて帰れる気軽さ」だとすると、どうもそうした方向性と合致しない。お店の外だけを見て、これこそがトレードオフがある特別感のあることだと思っても、それがお店で働く人、能力、文化、方向性に対して調和が取れていないといけないのだ。つまり、特別感は提供側から考えても「しっくり」とくることである必要性がある。一方で、アイスクリームを提供するが、抹茶アイスのみ、うどんを食べた後でも大丈夫なくらい量も少なめでささっと食べられる、など同じアイスでも調和していれば良い方法になりうるのだ。本当にお店で実現できそうな案かを見極め、場合によっては元々考えた特別感を多少アレンジし、洗練させたりすることで「よりお店に合ったもの」に仕上げていく。そとの状況、例えば競合店を無くすこともできないし、コンビニを減らすこともできない。お客さんの懐を増やすこともできない。しかし、内部の環境はあなた自身によって変えられる。スタッフの能力が不足であれば強化すればいい。お店の文化や雰囲気だって、大変だが少しづつでも変えていける。特別感を出すために、お店の中を「しっくり」くるよう変えることは可能である。このような過程を通じて、本当にできそうな特別感を選りすぐっていくことになる。

 

5) 決めたらとことん実行する

トレードオフを伴い、かつお店の雰囲気にもしっくりくる特別感が複数残った場合には優先順位をつけることもできる。おすすめの優先順位のつけ方は、「それが簡単に実現できるかどうか」、「実行後の効果(売り上げや利益への貢献度)が大きいかどうか」の2つの視点である。「簡単にできる」かつ「効果が大きいもの」が当然優先順位が高い。逆に、実行するのがあまりにも難しいもの(例えば、海外でしか入手できない特別な材料を使うなど)や、簡単にできるけど効果は低いもの(例えば、アイスクリームの提供は、簡単にできそうだが、売上や利益への貢献度は低い可能性がある)は優先順位を下げる。そして、優先順位の高いものから1つ1つ実行していく。ある教授が言っていたのだが、MBA生徒の特徴は、戦略を「考える」ことばかりに時間を費やして、実際に実行に移さない人が多いことだとか。戦略が何かを学びすぎて、実行していないのに満足しているのかもしれない。実行することは、戦略を立てることよりも何倍も苦労するし、お金も時間もかかることである。すぐに成果が上がるとも限らない。ちなみに、一番大変な「実行している(長い)間」、MBAの理論はあなたを何も助けてくれない。ただ、あなたがその道の途中で「本当にこの方法で良いのか?」「実は間違えた特別感に向かっているのでは?」などと自問自答した時に、あなたを陰で支えてくれるはずだ。MBAの理論を使ってあれだけ考えたのだから、信じてやってみようと!それがMBAの価値でもある(多分)。

 

6) まとめ

店主のあなたは、今のお店の場所や競合、またお店で働く従業員、雰囲気、文化、歴史、あなたの想い、夢など全てひっくるめて理想な特別感を考え、実行し、時に軌道修正しながら特別感を更に高めていく。一度高めた特別感も、時代が変わり周りが変われば変えるべきだし、従業員が変われば変えるべきだ。つまり、全国、世界にあるうどん屋にはそれぞれ固有の特別感があり、それぞれが各自の特別感を追求していることになる。なので、何が特別感なのかという一つの答えはない。ただ、今まで見てきたように特別感とは何か?特別感とはどうゆう特徴を持ったものなのかは、少なくてもイメージできたのではないだろうか。それこそがMBAで習うことである。そして特別感を実際に作る(実行)こそが重要であることも分かったはずだ。実行できずに失敗に終わる場合も多々ある。今回は、MBAで習う「戦略」のみに焦点を当てたが、この実行フェーズも極めて重要だということが改めて浮き彫りになったかもしれない。実際に実行していくには、会社やお店の中をどう変えていくのか、どうお客さんにアピールしていくのかが重要になる。ここからはMBAのコアで習う組織論、マーケティング、オペレーションなどが役立つのである。時間を見つけてこの辺りの内容も今後より深掘りしてみたい。

 

余談 ベンチャー企業における戦略

ちなみに、起業家にとって戦略とはどういうものだろうか。MBAは言うまでもなくある意味でコンサルタント向きの育成を行う。過去の膨大な経験を基づいた理論を武器に、無駄なく失敗しないような戦略を作る方法を学ぶからだ。しかし、起業家はそれとは違う素質も必要になる。起業家は、ある種クレイジーな考え方が必要だし、実行力がものを言う。この(クレイジーな)新しい考え方、ゼロから1を生み出すための理論や方法論などとして最近注目を集めているのが「デザイン・シンキング(Design Thinking)」、「デザイン思考」と呼ばれるものである。またアイデアが出てからも、それを実行しながら戦略も同時に考えるくらいのスピード感が求められる。腰を据えて戦略とは何か、と考えている暇が全くない。そこで役立つのが「リーンスタートアップ」と呼ばれる意思決定のスピードや効率性を重視したた方法論である。特にこれは、ベンチャー企業(Small business)だけではなく、更に開発スピードが早いスタートアップ(Startup)に必要な方法論である。起業の場合には、MBAで習う戦略をおさえた上で、ベンチャー企業やスタートアップに必要な上記のような方法論もマスターしておくべきだろう。

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